• Division of Microbiology (Kanda lab), Faculty of Medicine, Tohoku Medical and Pharmaceutical University

近況報告、Nature論文のことなど

4月になって大学院医学研究科が開設され、その研究科長に任命されました。そのためというと言い訳になりますが、なかなか7階の実験室に上がる時間を見つけられずにいます。それでなくても前期は微生物学I(細菌学)II(ウイルス学)の講義、実習に追われるのが常であり、その上に研究科長職に伴う業務がドンと上乗せされた感じです。今週になってようやく一山超えた感があり、久しぶりのブログ更新となりました。

今年はコロナ明けということもあって、微生物学実習も3年ぶりに1学年全員を相手にした「フルメニュー」で行いました。「フルメニュー」だと知識の定着が良いことを期待します。実習が終わった翌日からは四国・松山へ出張し、第36回ヘルペスウイルス研究会(7/7,8)に参加しました。その後、第70回ウイルス学会学術集会のプログラム編成会議(7/10, 11)もありました。ウイルス学会の大会長は西村秀一先生(仙台医療センター)で、東北各地の先生方と共に学会運営のお手伝いに参加しています。仙台で50年ぶりというウイルス学会開催なので、なんとか盛り上げていければと思います。

話は変わりますが、本日届いた”Web of Science Alert”のメールから、私が専門とするEBウイルス研究でNature論文が発表されていることに気づきました。ヒト染色体11q23にウイルス蛋白質EBNA1が結合するclustered repeatがあり、EBNA1の発現レベルが上がると11q23特異的にchromosomal breakが起こるという論文です。EBNA1がgenomic instabilityに関与するという話は以前からあったのですが、このように特異的な部位をターゲットにしているという報告は初めてだと思います。さらに驚くのは、この論文がUCSDのDon Cleveland研から出たということです。Cleveland博士は、私がSalkのGeoff Wahl研に留学中にinterlaboratory meetingで定期的にご一緒する機会があり、強い印象を受けた研究者ですが、まさかEBウイルスの論文がCleveland研から出てくるとは思いませんでした。EBウイルス潜伏感染細胞でのEBNA1蛋白質の発現レベルはとても低いので、EBNA1の誘導発現で起きるchromosomal breakが、実際に生体内で起きているのかどうか?データはそれを示しているようですが、ウイルス学を本業とする者として、驚いているばかりでなく、ファイティングポーズを取り続けなければいけません。

第36回ヘルペスウイルス研究会 会場付近から望む松山城